重い沈黙の後、直規が口を開いた。

「さおりの言いたいことは、わかった」

お願いね、と私が言う前に、直規が首を振った。

「でも、金髪とはもう付き合えない」

「どうして?」

「どうしてって……俺が今、好きなのは、今、目の前にいるさおりだから」

素直に嬉しかった。
でも、私たちはもう二度と会えないから、だから。

「俺はさ、最初からお前のことが好きだったんだよ。最初の意味、わかる?」

「……スタバで会った時のこと?」

直規が首を振る。

「バンジーだよ。あの時のさおりの横顔がずっと心の中にあったから。
それがなかったら俺、たぶん金髪とは……」

ってことは、直規が最初に好きになったのは私で、
だから金髪と付き合ったってこと?

「どうして黙ってたの?」

「後出しジャンケンみたいで卑怯っていうか失礼っていうか。
金髪にも、さおりにも」

ずるい。そんなことを言われたら、せっかくの決心が鈍ってしまう。