「さおり! さおり!」

肩を強く叩かれて我に返ると、すぐ目の前に見慣れた顔があった。

緑がかった茶色い目が私を心配そうに覗き込んでいる。

「直規?」

「びっくりしたよ。
波乗りしてたら、さおりが波打際に倒れてるんだもん」

ちょっと怒ったような顔。
でも、すぐに優しい目になる。

水と砂にまみれた体を起こすと、
ウエットスーツ姿の直規にぎゅっと抱きしめられた。

ありがとう、助けてくれて。
会いたかった。

いろんな言葉の代わりに、抱きしめ返す。
潮の香りが混じった、直規の匂いがした。

それから私たちは会えなかった間の出来事を話した。

直規は弟と仲直りしたこと、
筋トレで腕が太くなりすぎてしまい、
Tシャツが着られなくなったことを話してくれた。

私は、真紀子さんと会ったこと、フジミんの話。
本当に話さなきゃいけないことはなかなか言えない。