鎌倉の材木座海岸に着いた頃には、秋の日は傾き始めていた。
今日という日の終わりはもう始まっている。

朝から歩き通しで、足のあちこちが痛い。
私は道路から砂浜に降りる階段の途中に座り込んだ。

どうしよう。
このまま直規と私の世界が離れてしまったら…。
そうしたら、直規に二度と会えなくなる。

そんなのイヤだ。絶対に。

でも、どうすればいいんだろう。
疲れたし、痛いし、もう、どうしていいかわからない。

「助けて、直規……」

思わずそう呟いた時、抱えていたトートバッグが震えた。
違う、スマホが震えてるんだ。

急いで出ると、能天気な声が響いた。

「さおりん、塾サボって何してんのー?」

「フジミん? メッセージ読んだ? 昨日送ったやつ」

震える声で尋ねる。
怒ってるわけじゃない。ホッとしたんだと思う。