「うちのおじいちゃん、庭師なんだけどね。
木の枝と絵が絡み合うと、日当たりも風通しも悪くなるんだって。
そういう時はね、」

私の顔をちらりと見て、真澄がいいよどむ。

「そういう時は?」

私の代わりに、美園が真澄に尋ねた。

「どちらか一方を切り落とすんだって」

切り落とす……。
その言葉の鋭さに背筋が寒くなる。

黙りこくる私をちらりと見てから、美園が確かめるように言う。

「要するに、絡み合ったままだと、どっちもダメになる……ってこと?」

無言でうなずく真澄に、私もついムキになる。

「でも、それは木の話だよね?」

「うん。でも、同じだと思う。ごめん、こんなこと言って」

そんな……。

「もう、直規に会えなくなるってこと?」

そんなのイヤだ。
私はこんなにも直規と一緒にいたいのに。
直規のいる世界を捨てた金髪が憎たらしい。

でも、予感はあった。
健太、るいさん、真紀子さん。
それぞれ最後に会った時、もう二度と会えないだろうなって直感的に思ったのは事実だ。

だとしたら、直規との別れも近いのかもしれない。

「じゃあいっそのこと、私があっちの……」

「さおり」

全部言い終わる前に、美園に遮られた。
静かだけど、有無を言わさない声。

「そんなこと、言わないで」

何も言えずにいる私の手に、美園が自分の手を重ねる。