そんなことを言えるのは、二人が知らないからだ。

いつどこで会えるのかわからない心細さも、
会いたくて、直規に借りたパーカーを抱きしめる苦しさも。

グレーのパーカーに残る、大好きな匂い。
抱きしめてくれた時に知った、直規の匂い。
それは、私の世界にはいなくても、直規がどこかに存在するという証だった。

「私は二人が羨ましいよ。会いたい時に会えるんだもの」

思わずこぼれた本音に、二人が気まずそうに顔を見合わせた。

「そうだよね、会いたいよね。好きなんだもん」

「会いたいっていうか……会わなきゃ。
会って、金髪の話をしなきゃ」

私は、カバンから灰色がかった水色のノートを取り出した。

直規や真紀子さん、健太やるいさんと会った日を記録したノートだ。

何度見直しても、結局何の糸口も見つからないのだけれど。