るいさんは右手を頬に当て、下を向いてしまった。

そりゃあ戸惑うよね、こんな話。

勢いに任せてまくし立てたことを後悔した。

けれど、ゆっくり顔を上げたるいさんの目には、ほんの少しだけ、
光が差していた。思い込みかもしれないけど。

「ありがとう、かおりちゃん」

「え?」

「優しいね。
そういうところも、さおりとそっくり」

華奢で温かい両手が、私の右手をそっと包む。

私はそれ以上喋るのをやめて、包むるいさんの手に左手を添えた。

大丈夫。
あなたは大丈夫。

そう心の中で繰り返しながら。

るいさんは、何度も振り返りながら
改札をくぐり、そして、人混みの中に…消えた。

どうか、気づいてくれますように。

「keep smiling」

まるで私自身に言い聞かせるような、殴り書きのメッセージに。