「みんな、誰かを押しのけて打ち負かして、自分だけ上へ行こうとするでしょ。
そうじゃなくて、自分のいいところを出し合ってつながるんだよ。
そうすれば、世界は横に広がっていくでしょ。
だから俺、どうすればそうなるのか、知るために大学に行こうと思って」

「なんか……受験生っぽいね」

「でしょ? 
さおりん、前に言ってたじゃん? 
人は手のひらいっぱいに才能の種を持って生まれてくるって」

そう言えば、前に話したような気もする。

「俺も、持ってるかな」

フジミんが私をじっと見つめる。
いつもなら突き放すところだけど、緑がかった茶色い目はいつになく真剣だった。

「あたり前でしょ」

「例えば? どんな才能だと思う? 教えて教えて!」

ほら、すぐ調子に乗る。
そういうところはやっぱりフジミんだ。

「私にわかるわけないでしょ」

「ほら、やっぱりないんじゃん」

ちょっと突き放したら、大げさにうなだれた。

「フジミんの種は今、土の中で芽を出すチャンスを狙ってるんだよ。
だから、いつか咲くよ。フジミんの花も」

「そっか。そうだよね」

力強く頷いた顔が、これまでにないほど直規に似ていた。

途中まで同じ人間なんだから、当たり前だけど。