「あーあ。
さおりんと二人でコスモクロックに乗りたかったのにぃ」

臨港パークの芝生に座り込んだフジミんは口を尖らせた。

そう言えば、フジミんと初めて出会ったのはここだった。

すぐそこにあるはずのコスモクロックは、ケーキみたいな形のホテルに隠れて見えない。

「風が気持ちいいね」

お願いをスルーした私に、フジミんが嬉しそうに返す。

「さおりんは、海が好きなんでしょ? 
親がウィンドサーフィンをやってたって前に言ってたもんね」

金髪ったら、そんなことも話したんだ。

「俺は、あんまり海に縁がなかったんだよね。
うちの親父、夏は野球で忙しいから、シーズンオフしか遊びに連れてってくれなくて」

「野球のデーゲームとか?」

「そうそう! 
親父の高校が春の選抜を逃した時は、春分の日に海に連れてってもらったけど。
海はついでで、生しらす丼が目当てなんだけどさ」

じゃあ、直規もお父さんと海に行ったことがあるんだ。

よかった。
向こうの直規のことを考えていたら、フジミんが唐突に言った。

「俺、世界は横に広がればいいと思うんだ」

「は?」