「私の父は医師で、戦前からあの場所で医院を開いていたの。
当時は石川医院という名前だった。
腹違いの兄は、年が離れていたこともあって、本当に可愛がってくれたわ」

真紀子さんは、目を凝らして過ぎ去った時代を見つめるように、遠い目で話し始めた。

「兄も帝大の医学部で学んでいて、
そこで出会ったのが直人さんだった。

兄は『飯を食わせてやってください』って、
しょっちゅう我が家に直人さんを連れてきたわ。

物静かな兄は、明るい直人さんといるととても楽しそうで。
両親も歓迎してた。

でも、当時の日本は戦争中でね。
学生だった兄と直人さんは卒業の時期が繰り上げられて、
軍医見習いとして戦地や内地に送り込まれたの。