辿り着いたのは、マンションのようにも病院のようにも見える建物だった。

真紀子さんは慣れた様子で入って行くと、エントランスの奥のスペースに入って行った。カフェかサロンのようだ。

一番奥のテーブルに座ると、「紅茶を二つ」と勝手に注文した。
まあ、紅茶でいいけど。

「横浜にはよく来るの?」

この前より、穏やかな声。

「塾に通ってるんです。すぐそこの」

「そう」

真紀子さんがうなずく。

だめだ、さっそく会話が続かない。

運ばれてきた紅茶をしばらく無言で飲んだあと、私から切り出した。

「ここ、病院ですか? どこか悪いんですか?」

「終の住処ですよ、私の」

平然と言い放つ真紀子さんに、今度は私が驚く番だった。

「え? 医院は?」

「閉めましたよ。少し前に」

「それでここに? もしかして、一人で?」

混乱する私に、真紀子さんが毅然と言った。