違う世界の人なのに。
好きになっても仕方がないのに。
わかっているのに。

それでも、私の中は直規でいっぱいになっていく。

体中に満たされていくこの気持ちと、この瞬間は確かに感じる直規の感触を、私はずっと忘れないだろう。そう信じたかった。

ゴンドラは、地上の光の中へとゆっくり降りてゆく。

私たちは、どちらからともなく手をつないだ。

まだ離れたくない。
指を絡めてつないだ手にぎゅっと力を入れる。

「降りるよ」

緊張気味の、直規の声。
私がうなずくと、直規は私の手を握ったまま、先に扉の外へ出た。

引っ張られるように、私も一歩踏み出す。

踏み出した右足が地面に着いた瞬間、私はバランスを失った。

つないだ右手の先にいたはずの直規がいない。

まるで、パタンと本を閉じたみたいに。
大好きな人がいる世界は目の前から消え、私は現実の世界へ連れ戻されてしまった。

目の前がみるみる涙でにじんでいく。

直規。

いるはずないとわかっていても、涙でにじんだ世界に呼びかけずにいられない。

こんなの、あんまりだ。
恋なんて、私は望んでいなかったのに。

それなのに、あんなに暖かな幸せを一方的に与えてから一瞬ですべて奪うなんて、ひどい。ひどすぎる。

ジェットコースターの轟音と人々の歓声に紛れて、私は泣いた。

泣きすぎて、頭がクラクラする。
それくらいしか、私たちを振り回す目に見えない「何か」に抗議する術を、私は知らなかった。