私たちを乗せたゴンドラが、ゆっくりと夜空へ上っていく。

向かい合わせに座った直規の後ろに、夜の海が見えてきた。

周りのビルが見る見る小さくなり、遊園地の喧噪が遠のいていく。
夜空にぽっかり浮かぶゴンドラに、直規と二人きり。

これまでだって何度も二人で過ごしてきたのに、なんだか恥ずかしくて、直規の方を見られない。

「あ、あそこ」

直規がいきなり立ち上がったせいで、ゴンドラががたんと揺れる。

「やだ、ちょっと」

「大丈夫だって。ほら、あそこ」

直規は目の前の高いビルを指差しながら私の隣に座った。

「このビルとランドマークの間に、富士山が見えるんだ」

「……見えないじゃん」

私が口を尖らせると、直規は顔を寄せて「昼間の話だよ」と笑った。

ちょっと、顔が近いってば!

声に出さずに心の中で叫ぶ。
直規の体の右側と私の体の左側が、すでにぴったりくっついている。