「そんなに好きなら、
何度も乗ってるんだろ? コスモクロックに」

拗ねた私の機嫌を取るように、直規が優しく尋ねる。

「ううん」

「何で? そんなに好きなのに?」

「いつか乗りたいとは
思っていたんだけど、いつも
『今じゃないな』って思っちゃって」

「今も?」

「え?」

「今も、『今じゃない』って思う?」

思わない。
たぶん、今なんだと思う。
私は小さく首を横に振った。

「じゃ、行くしかないな」

直規は勢いよく立ち上がると、私の手を引っ張った。

「大丈夫? 高いところ、怖いんでしょ?」

バンジージャンプで
あんなに大騒ぎしたくらいだもの。
直規の横顔を見上げると、耳が赤くなっていた。

「平気だって。観覧車くらい」

まったく、照れるのか怒るのか
はっきりしてほしい。
照れ怒りがかわいすぎて困る。

「だいたいなあ、
あの時だってちゃんと
飛んだんだからな。
さおりが見ていないだけで」

「飛べたの!? 絶対無理だと思ったのに」

「失礼な。まあ、目の前であんなに
さらっと飛ぶ姿を見せられたら、
こっちも飛ばずにいられないっつーか」

「私のおかげなんだ」

「そ。だから、行こう」

今度は私も素直に頷いた。