「高校一年生のゴールデンウィークだったかな。
美園たちとコスモワールドに来たの。その時、初めて夜のコスモクロックを見て、大好きになったんだ」

もちろん、それまでだってコスモクロックは何度も見ていた。
だけど、それはいつも昼間だった。
だから、初めて間近で見た夜のコスモクロックに、私は釘付けになった。

友だちと夜、遊んでいるというワクワク感もあったのかもしれない。
でも、それだけじゃない。

「だって、働き者でしょ。
観覧車なのにイルミネーションで、おまけに時計なんだよ?」

喋っている途中で直規がニヤリと笑った。

「高校生で、家事要員で、時々図書委員、ってさおりみたいだよな」

「うん」

やっぱり直規は私のことがなんでもわかっちゃうんだ。

「俺も好き」

直規がコスモクロックを見上げた。
直規の横顔を遊園地の灯りが照らす。
見とれていると、直規がこちらを振り向いた。

「夜を背負ってくるくる色が変わって、見てて飽きないよな」

私にまっすぐ向けられた、緑がかった茶色の目。
その視線に、ドキドキする。
私は慌てて目を逸らし、海のそばのシーバス乗り場の方を指差した。

「シーバスからうっかり夜の海に落ちても、コスモクロックが見えたら岸まで辿り着けるよね」

「普通は落ちないだろ、海に」

笑いながら、直規が私を肘でつつく。

「例えばの話でしょ」

ムキになって言い返すと、「わかってるって」と、頭を乱暴に撫でられた。
これじゃ完全に子供扱いだ。
本当は同い年のくせに。