「さおりさん!」

声のした方を振り向くと、長袖のワイシャツを着た、ガタイのいい男の子が猛ダッシュでこちらに突進してくるのが見えた。

牛を迎え撃つ闘牛士ってこんな感じかもって思うほどの迫力。

「やっと会えた……!」

さすがアメフト部。
猛ダッシュしてきたのに、息一つ上がっていない。

「また大きくなったね」

日に焼けた顔は、見上げた私の顎が上がるほど、高いところにある。

健太くんは、恥ずかしそうにおでこを掻いた。

「この前はすいません。俺、動揺しちゃって……」

「ううん。私こそ。私が家に連れてったりしたから……ごめん」

私が怒っていないとわかってホッとしたのだろう。
健太くんが太い首をブンブン振る。

「さおりさんは悪くないっす。勝手に俺が落ち込んだだけなんで」

「なんで? どうして君が落ち込むの?」