もしかしたら私は「青春っぽいもの」に憧れているのかもしれない。
自分とは一番かけ離れたものだからだろうか。

8月最初の月曜日の7日。
図書室開放日の当番になっていた私は、
誰も来ない図書室の窓からグラウンドを眺めていた。

夏の日差しが野球部の真っ白いウエアに反射して、
グラウンドはまぶしさを増す。

「青春だなあ」

室内にいてもうんざりするほど暑いのに、動いて汗をかくなんて。
いかにも青春って感じ。

直規も高校まで野球部だったって言ってたし、私も大学ではサークルに入ろうかな。

12時のチャイムで図書室を閉めて、職員室に鍵を返しに行く。
やっと帰れるのは嬉しいけど、外の暑さを思うとため息が出る。

だけど、昇降口を出てすぐ、空気がガラリと変わったのがわかった。

何これ、涼しい。

私はとっさに周りを見回した。
さっきまで青々とした葉を揺らしていた木々は、葉を落とし始めている。

きたんだ、違う世界に。
それなら、直規に会えるかもしれない。

急いでプール棟の方へ走り出すと、
途中で誰かに呼び止められた。