「何か食べない?」

るいさんはそう聞いてくれたけど、お腹は空いてない。

それならと買ってくれたアイスラテを手に、二人で大黒パーキングの2階のデッキに上がった。

暗い海からの湿った風が気持ちいい。

「ここ、昔は目の前にベイブリッジが見えたのに。
前はこんな建物、なかったもんなあ」

ベイブリッジをさえぎるようにそびえる建物を、るいさんが恨めしそうに見上げる。

こっちのるいさんも美人だけど、向こうのるいさんと比べて色気は50%オフって感じ。
メイクが地味なのと、話し方がテキパキしてるせいだと思う。
私が言うなって話だけど。

「先生みたいな仕事の仕方が正解だとは私も思わないよ。
っていうか、ダメだよね」

そりゃそうだ。
私の反応をちらりとうかがってから、るいさんは「ふふ」と笑って続けた。

「わかっててもやっちゃうのよね、先生は。
一人でも多くの人を救いたいんだと思う。
それができる人だから」

「だから家族はどうでもいいんだ」

思わずそう言ってから、しまったと思った。
八つ当たりみたいになってる。

でも、るいさんはそんなことを気にするふうでもなく、続けた。