「気を悪くした?」

「いえ、別に。背中も何もあの人、家にいないし」

「そっか」

るいさんの返事はさらりと軽い。
っていうか、軽すぎる。
一言言ってやりたい気になったのはそのせいかもしれない。

「っていうか。
医者って自分の母親の骨上げを放り投げてでも、患者優先にしなきゃいけないんですか?」

精一杯の皮肉は、るいさんにさらりとかわされた。

「そうなんだってね。
私も後で聞いてびっくりしちゃった」

なんだそれ。
あ然とする私に、るいさんが続ける。

「みんながみんなそういうわけじゃないと思うよ」

るいさんの車は、私の家に一番違い高速の出口を素通りした。

左手にライトアップされたマリンタワーが現れ、一瞬で後ろに消えていく。

そのままベイブリッジを渡ると、るいさんは大黒パーキングエリアに車を停めた。