「すいません。
初めて会ったのに、いろいろ聞いちゃって」

「別にいいけど、気になる? 私のこと」

駅はもう目の前だ。
でも、聞きたいことがまだたくさんある。

「まあ、はい」

一瞬の沈黙。

「ちょっとドライブしない?」

私の答えを待たずに車は駅を通り越した。
暗くなり始めた街を走り抜け、勝手に高速に乗る。

「どうしてそんなに父に親切なんですか?」

私だって子供じゃないから、本当は聞かなくてもわかる。

るいさんが、ちらりと私を見た。

「尊敬しているから」

「本当に? 
尊敬できるところなんてあります?」

「あるよ。
さおりちゃんだってそうでしょ?」

高速を飛ばしながら、るいさんが質問で返す。

「まさか」

「さすがの八月一日先生も、娘にはかなわないね」

仏頂面の私をるいさんが笑う。

「先生の背中を見て医学部を目指してるんじゃないの?」

そんなことまで知ってるんだ。
あの人、うちではカタコトみたいな日本語しか話さないのに。