父の病名は急性膵炎。
しばらく入院することになるという。

お葬式以来、ほとんど家に帰ってきていなかったくせに。

久しぶりに会うのが病院で、しかも病室なんて、いい加減にしてほしい。
忙しいくせにあんな食生活で、体を壊さないわけがないのに。

職場に入院なんて落ち着かないんじゃないかと思ったけど、いつも以上に無表情な顔からは何も読み取れない。病気なんだから、当たり前か。

今さら話すこともないのに、父と二人きりなんて地獄だ。
今すぐどうこうなるわけでもないし、もう塾に行っちゃおうかな。
真紀子さんの告別式の日に、父がそうしたみたいに。

立ち上がろうとした時、誰かがドアをノックした。

入ってきたのが誰か理解するのに、ほんの少し時間がかかった。
印象がまるで違ったからだ。

思わず息を飲んだ私に、その人が気づく。

「初めまして。
看護師の野村です。
八月一日先生にはお世話になってます」

るいさんだ……! 

丁寧なお辞儀に慌てて立ち上がった。

「は、はじめまして。娘のさおりです」

こちらのるいさんはにっこり笑うと、
「これ、お願いします」
と書類のようなものを出した。

細身のデニムに、白いノースリーブ。

清潔感のある服装だけど、雰囲気は向こうのるいさんとまるで違う。
真紀子さんのお葬式で見かけて気になったのも、この人だ。

どこがどう違うのかわからないけど、印象が違いすぎてすぐに結びつかなかったんだ。こっちのるいさんは、5歳分若いし。