お骨を拾う前に喪主が帰っちゃうなんて、あり得ない。

火葬場の係の人たちが
このまま進めていいのか
慌てて話し合っている。

真紀子さんの友達や、
八月一日医院の人たちも呆れたような、哀れむような目で私を見ている。

そりゃあそうだろう。
私だって呆れる。

「喪主抜きでもかまいません。進めてください」

きっぱり言うと、
大人たちは気圧されたようにうなずいた。

自分の親をしっかり
見送ることもできないのに、
何が医者だ。

真っ白な真紀子さんの
お骨を見ながら、
私は心の中で毒づいた。

真紀子さんのお骨は
しっかりと形が残っていて、
それがまた真紀子さんらしい。

八月一日医院で最後まで
真紀子さんを支えてくれた
看護師さんと一緒に拾いながら、
私は真紀子さんにお別れを告げた。