真紀子さんが突然亡くなった。
期末テストが終わった3日後の、七月上旬のことだ。

私の期末テストが終わってから逝くなんて、真紀子さんらしいなと思う。

しばらく離れて暮らしていたせいだろうか。
真紀子さんがもうこの世にいないという実感が湧かない。
フワフワした気持ちのままお通夜が始まった。

真紀子さんの友達や昔の患者さん。
父の仕事関係の人も多いらしく、お焼香の列は思った以上に長い。

読経が流れる中、父と並んで弔問客に頭を下げている時、
目の前を通り過ぎていった人の横顔に目が止まった。

あれ? この人、誰だっけ。

どこかで見たような気がして思い出そうとしたけど、
次々と通り過ぎていく弔問客に頭を下げているうちに、忘れてしまった。

翌日の告別式は、梅雨なのに朝からよく晴れていた。

うちは、私だけじゃなく、父も真紀子さんも兄弟がいない。
だから、親戚がほとんどいない。
真紀子さんの友達や八月一日医院で長く働いてくれた人たちが火葬場まで来てくれて、精進落としは少しにぎやかになった。

でも、普段は一人で過ごす一人っ子としては、そろそろ人の輪から離れたい。
トイレに行くふりをして、控え室をそっと出た。