翌朝、いつもより早く起きると、
父はもういなかった。

その代わり、メールの返事は来ていた。

ただし、「了解」の一言のみ。
施設からも連絡はなかったし、
真紀子さんの方は大丈夫そうだ。

安心した私は、いつもより早く家を出た。

どうか、会えますように。

祈るような気持ちで、走って駅に向かう。
けれど、改札の前に直規の姿はなかった。

寝落ちしてるのかな。
ファミレスに行ってみると、中が暗い。
よく見ると、ドアに「営業時間10時〜23時」と書いてある。

大丈夫かな、直規。
別のファミレスで夜明かししたのかな。
それなら、会えるかな。

そう思って、
お昼休みにチャペル前に行ってみたけど、
直規には会えなかった。

戻っちゃったんだ、あっちの世界に。

どうかしちゃってるって、自分でも思う。
出会うはずのない人に出会って、
一緒にいる時間が長くなって、
私を迎えに来て、
送ってくれて。

それだけでも奇跡なのに、
もっともっと、
って思ってしまう。

食べても食べても
お腹いっぱいにならなかった、成長期の私とおんなじ。

「さおり!」

走ってきた真澄と美園に
傘をさしかけられて、
雨が降っていることに気がついた。