そしてまた世界は枝分かれする

「あ、うん。
でね、5月5日に私が一緒にいたのはこの人で、
フジミんが一緒にいたのはこの人の元カノ。
フジミんは、私と一緒にいたって勘違いしてたけど」

二人とも、ぽかんと口を開けて私の話を聞いている。
わけわかんないよね、こんな話。

先に口を開いたのは、真澄だ。

「要するに、フジミんとさおりのそっくりさんがもう一組いるってこと?」

「まあ、そんな感じ」

でも、と美園が疑わしげに首を振る。

「空似だとしても、チョコレートアレルギーまで一緒って、おかしくない?」

嘘は言ってない。でも、目線が下がる。

「さおり」

美園の声は、さっきよりも落ち着いていた。

「どうして私が怒ってたかわかる?」

顔を上げると、美園が私をまっすぐに見ていた。

「フジミんと何かあったとしても、
悪いのはフジミんだってことくらい、わかってるよ。
私はね、悲しいの。さおりが本当のことを言ってくれないのが」

直規が私を見た。
「全部話せば?」と言ってる目。やっぱりそうだよね。

「直規、免許と学生証、持ってる?」

直規は私に頷くと、青いバッグから財布を取り出し、
いつかみたいに学生証、免許証、保険証をテーブルに並べた。

「佐藤直規って、やっぱりフジミんじゃん。
え? 何でうちの大学!?」

美園が免許証と直規をせわしくなく見比べる。
真澄なんて、直規の学生証を折り曲げたり、天井のライトに透かしたりしてる。

「ちょっ、これ、偽造とかじゃないから!」