近くのカフェで女子高生三人に囲まれた直規は、
落ち着かない顔で身を縮めた。

そんな直規を、美園が腕を組んだままじっと見つめる。
というより、にらんでいる。

「あれ?」

美園がテーブル越しにぐいっと顔を近づけた。
さすが元カノ、気づいたか。

「ピアスの穴、塞がってない?」

美園が直規の左の耳たぶを引き寄せる。
直規は「痛っ」と声を挙げたけど、されるがままだ。
ごめんね、直規。

「目の上の傷も…どうやって消したの?」

美園は直規ではなく、私に尋ねた。

「ピアスの穴も目の上の傷も、もともとないの。
この人、フジミんとは別人だから」

真澄も、直規の左耳と右目の上に顔を近づけて「本当だ」とつぶやいた。

「覚えてる? 去年の年末、
私がみなとみらいで変な男に追いかけられたこと」

二人が同時に頷く。

「それが、この人なの」

直規が小声で「人を変な男って…」と抗議してきたけど、
今はそれどころじゃない。

「この人の彼女が私にそっくりで、勘違いしたんだって」

「彼女じゃなくて、元カノね」

直規が今度はハッキリした声で否定した。