「この間は、ごめん」

「この前は、悪かった」

謝る声が重なって、自然と笑顔になった。

「早く謝りたかったんだ」

「俺も。ずっとさおりのことばっかり考えてたよ」

本当に、私のこと? 金髪じゃなくて?

「あ、金髪とは、きっぱり別れたから」

「えっ!?」

どうして、という言葉を飲み込んだのは、
刺さるような視線を感じて振り向いたから。

「美園…!」

どうしてまだいるの? 
部活はもう引退したはずなのに。頭が真っ白になる。

固まっている私に直規が「誰?」と小声で尋ねる。
ちょっと、 それはマズイって!

「へえ。いろんな女にちょっかい出しすぎて、
元カノの顔も忘れちゃったんだ」

口調は冷静だけど、明らかに怒っている顔。

「えっ、俺……?」

直規が困惑した顔を私に向ける。

「結局、こういうことなんだ」

美園が冷たく言い放った。
さすがの真澄もフォローできないという顔で私を見ている。

「二人が付き合おうが、私がグダグダいうことじゃないけどね。
でも、これってどうなの?
私のことをバカにしてる気づかなかった? 
わざわざ学校でイチャイチャするなんて」

終わった……。
本気で怒った時ほど、美園は冷静な口調になる。
私は言い返す言葉もなく、うなだれた。

美園が怒るのも当たり前だ。
いくら別人でも、私たちが一緒にいるところを見ちゃったんだもん。

って、あれ? これってチャンスじゃない? 
信じてもらえないかもしれないけど、何もしないよりマシだ。

私は大きく深呼吸をすると、美園の目を見据えて言った。

「この人、フジミんじゃないんだ」