「あの、どちらからいらしたんですか?」

「2018年の12月7日よ」

「そういうことじゃなくて。
いや、それもそうなんだけど、そちらはどんな世界なんですか?」

「私は……そうね、
『ゆかりさんが助かった世界』から来た、と言えばいいかしら」

ということは、金髪のさおりの祖母、ということか。
私は、自分が訪れた世界の一つである、金髪さおりの世界の話をした。

しかし、真紀子さんは首を横に振った。

「それは断定できませんね。
こちらのさおりが今、金髪かどうか、私にはわからないから。
というより、もう何年も会っていないのよ」

「何年も? 近くに住んでいるのに?」

「そんなものよ、息子の家族なんて。
こちらの私は、お嫁さんが亡くなったから
あなたたちと同居したんでしょうけれど、
私はもともと、『親子だからこそ干渉せず』がモットーですから」

「嘘。そんなことない」

思わず強い口調になった私を、真紀子さんが驚いた顔で見た。
その人ごとのような顔がまた頭にくる。

「私が医師になるように仕向けたのは、真紀子さんだもの」

中学を受験することは、いつの間にか決まっていた。
その上で、真紀子さんが私に見せた学校のパンフレットは、
今思えばどこも医学部のある大学の附属中学だった。

そう、真紀子さんは私の前に上手にレールを敷いていたのだ。
私が自然とそのレールに乗るように。