フジミんに捕まると面倒なので、授業が終わると
すぐに教室を出て横浜駅に向かった。
塾のある西口から人波を泳ぐように京急線の改札へ向かう。

横浜駅はいつだって工事中で、いつだって混んでいる。
酔っ払っているグループや、柱にもたれて別れを惜しむカップルが
今日はやたらと目につくのはどうしてだろう。

テストが終わっても、こんな時間まで必死に勉強しちゃってるし、
この世界で人生を楽しんでいないのは私だけかもしれない。
そんな、いじけた気分になる。

最近、時々わからなくなる。
いや、時々じゃない。しょっちゅうだ。
それならやめればいいのに、
今さら勉強をやめるのはもったいないと思ってしまう私は、
ケチというか、貧乏くさい。

蒸し暑いせいか、大学生みたいな半袖のグループが歩いていた。
気分はすっかり夏なのか、楽しそうだ。
その集団を避けようとした時、目の前を分厚いコートを着た人が横切った。
あまりの違和感に、目が無意識に分厚いコートを追った。
そして、コート姿のその人が誰か気づいた私は、
雷に打たれたように立ち止まった。

後ろから歩いて来た人に押されて我に返り、
慌てて追いかけたけれど、
その人は人混みに紛れてあっという間に見えなくなった。
私は迷わずロータリーからタクシーに乗った。