言葉を失った私に、フジミんはもう一度ニカッと笑って言った。

「じゃあさ、俺は何に向いてると思う?」

「そりゃあ、女の子を口説くことでしょ」

「ちょっとさおりん、真面目に考えてよ!」

はいはい、すいません。って、何で私が謝ってるんだ?

「人は手のひらいっぱいに才能の種を持って生まれてくるんだって。
その種から芽が出て花が咲くかどうかは、自分次第だけど」

「さすがさおりん、いいこと言うね!」

完全に真紀子さんの受け売りだけど。

「前に言ってた、さおりんと俺がもう一人いる話。
そこでの俺は、どんな設定なの?」

設定って……やっぱり作り話だと思うよね。まあ、その方がいっか。

「フジミんと正反対だよ。
不器用で融通が利かなくて、俺様だけど責任感だけは強くて。
人助けが好きで、将来は消防士になろうと思ってて。
人の役に立つことで、自分の存在意義を確認するみたいな、そんな人」

自分でも、ちょっとびっくりした。
直規のことになると、こんなにスラスラ言葉が出てくるなんて。
戸惑う私の顔をフジミんがニヤリと覗き込む。

「さおりんは、そういう男が好きなんだね」