「どうでもいいの?」

「うん。俺は弟ほど野球好きじゃないし。
そりゃあ、試合に勝てば嬉しいけどさ。
誰かを負かすために怒鳴られながら頑張る意味って、わかんなくね?」

「それを言ったら、受験だって同じでしょ」

「それ! だから俺、目標が欲しいんだよ。
大学に行くにしても、行かないにしても」

「そんなこと言われても……。
目標なんて、私の方が欲しいくらいだし」

困惑する私に、フジミんが首をかしげる。

「さおりんは医学部に行くんでしょ? 
前に美園が自慢してたよ。自分のことみたいに」

美園の名前を出されると、胸がちくっと痛む。
っていうか、完全にこの人のせいなんだけど。

ムスッとした顔で「まだ決めてないよ」と返すと、
フジミんはアニメの主人公みたいな顔でニカッと笑った。

「そうなんだ。じゃあ、これから何にでもなれるね」

「え?」