「よかったら、聞かせてください。
私と似た人が、どんな人なのか」

るいさんが、自分のカップに目を落とす。
でも、その顔は優しい。

「あの子は……さおりって名前で、
わがままで甘ったれで、でも優しい子でね。
いつも金髪のショートだったから、人混みでもすぐに見つけられて……」

やっぱり金髪さおりの世界みたいだ。
それなら直規もこの世界にいるってことかな。

るいさんはしばらく黙って物思いにふけってから、不意に口を開いた。

「かおりちゃん、お腹空いてない? 
何かおいしいものでも食べながら話さない?」

「あ……はい」

るいさんの顔が一瞬で明るくなる。

「近くに美味しい店があるの」

どうせ帰っても一人だし、私が帰らなくても誰も気づかないし。
それなら、るいさんと過ごすのもいいかもしれない。

そう思って、るいさんのマンションの出口を出たところで、
私は再び自分の世界に戻ってきてしまった。