その人は、茶色い革張りのソファに私を座らせると、
丁寧すぎるほど丁寧に私の膝の傷を手当てしてくれた。
そして、大きめのバンドエイドの上にそっと手を当てた。

まるでお母さんみたい。
顔は全然似てないのに、不思議とそう思った。

でも、どうしてこんなに親切にしてくれるのかな。
こっちのさおりとどういう関係なんだろう。
「よかったら…何か飲まない?」

「飲む?」じゃなくて、「飲まない?」。

私を引き止めたいけど、遠慮してるみたい。
この人に何をどこまで話していいのかな。

最近、失敗続きだから、ちゃんと判断できるか、ちょっと自信がない。
でも、じっと見つめられて結局、「頂きます」とうなずいてしまった。

彼女がキッチンへ行った隙に、ローテーブルの上の雑誌に手を伸ばす。
初めて見る雑誌だけど、私が知らないだけなのか、
この世界にしかない雑誌なのかがわからない。

それより、知りたいのは今がいつかってこと。
急いで表紙と背表紙に目を走らせる。

あった。ええと…えっ? 2022年? 

驚いて他も見てみたけど、どれも2022年と書いてある。
私がいる世界の5年後か。
直規の世界とも、別の世界なのかな。