「すぐ近くだから」と言った通り、
その人のマンションまで三分もかからなかった。

でも、玄関の前で足が止まった。
いくら女の人でも、知らない人の家にいきなり入っていいのかな。

私の小さなためらいを、その人は見逃さなかった。
私の目を覗き込んで、「ふふ」とほほえむ。
大人の女って感じの笑い方。私とは無縁だけど。

「安心して。私は一人暮らしだし、何も企んだりしていないから」

どうして私の心の中がわかるんだろう。
私は「いえ、そんな」と小さく首を振り、その人に続いて玄関に入った。

通されたのは、シックな家具でまとめられたリビングだった。
広くはないけど、居心地がよさそうだ。