そしてまた世界は枝分かれする

「でも、元は一緒なんだから、金髪だってできるはずだよ。
なのに直規が甘やかしてるんじゃない!」

「元は一緖でも、今は違うだろ。
かわいそうだから黙ってたけど、
金髪だって母親が不倫するわ、両親が離婚するわで……」

え? お母さんが不倫? なにそれ、嘘でしょ? 

混乱したまま、叫ぶようにまくしたてた。

「でも、だからって金髪は何したって許されるわけ? 
親が生きてるだけマシじゃない! 
それに何なの? さっきからかわいそうかわいそうって、
その上から目線。『俺がいなきゃ』って思いたいだけじゃん!」

「はあ!?」

ガタンと立ち上がる音。私を見下ろす怒った目。

私は勢いよく立ち上がり、背を向けて歩き出した。

「さおり!」

背後で一度だけ聞こえた、直規が私を呼ぶ声。
その声を振り切って店を出ると、私は自分の世界へ戻ってきた。

「かわいくないから、そういうの」

直規の声が頭の中をぐるぐる回る。

もしも直規が金髪より先に私のことを心配してくれたら、
こんなにムキにならなかったかもしれない。

要するに私は嫉妬したんだ。
私が持っていないものを持っているもう一人の私に。
認めたくないけど。

元は一人だった金髪と私が生まれた時に持っていた、
手のひらいっぱいの花の種。
その中にあった「かわいげ」の種は、
金髪が持っていっちゃったんだ、絶対。

キライだ。大っキライ。
金髪も、金髪を甘やかしている直規も。

涙がこぼれ落ちる前に、私は手のひらをぎゅっと握りしめた。