「ちょっと放っておけば?」

「そういうわけにはいかないよ。
あいつ、一人じゃ何にもできないもん」

困ったとか言いながら、得意そうな顔。

「直規がそう思ってるだけかもよ?」

「いやいやいや。そっちの世界に行っても、
結局俺がいないとダメだったじゃん?」

俺がいないとダメって、何それ。

「そうやってこっちでもそっちでも直規が甘やかすから、
金髪がつけあがるんでしょ?」

「は? 何それ。俺のせいだって言いたいの?」

「そうは言ってないけど」

「言ったじゃん。俺が甘やかすからって」

直規が子供みたいに口を尖らせる。それがまたムカつく。

「だってそうでしょ? 
あいつはダメだって言いながら、甘やかしてるじゃん」

「俺は純粋にただ心配してるの。
そりゃあ、さおりは何でも自分でできるだろうけど、
かわいくないから、そういうの」

かわいくない……って、
そんなの知ってるよ! 直規のバカ!

「かわいくなくて悪かったね! 
私は誰にも甘えられなかったの!」

直規の目が一瞬揺れる。まずい、という顔。

哀れむようなその顔を見た時、
浮かんだ言葉は「ずるい」だった。

金髪はずるい。
お母さんがいるくせに、その上、直規にまで甘やかされて。