もっとうまくごまかした方がよかったのかな。
でも、本当のことだし、彼だって、
私のことを「死んだ姉」って呼んだわけだし。

おあいこだ。
そういうことにしておこう。

なんて、割り切れるわけもなく、
昨日からずっと頭の中は堂々巡りだ。
私のマイルールは「迷うな。決断は10秒以内で」なのに。

あれから丸一日たってもモヤモヤしている。
まっすぐ帰る気になれなくて、みなとみらいまで来てしまった。

いつものスタバのコスモクロックが見える席で、
チョコレートソース入りのショートラテを飲もうとした時、肩を叩かれた。

緑がかった茶色い瞳と目が合い、お互い右手を左耳に添える。
よかった、あっちの直規だ。

「ここに来たら、会えるかもって」

「私も」

二人同時に笑顔になる。
直規は肩にかけたマリンブルーのメッセンジャーバッグを下ろして、
私の正面に座った。

「元気?」

「ぼちぼちだな。さおりは?」

「私もぼちぼちかな。ちょっと面倒なことになっちゃって。
まあ、大丈夫なんだけどね」

美園とフジミんのケンカのこと、
金髪のさおりがフジミんに迷惑をかけた話、
健太くんとのできごとを話す。
あんまり深刻ぶらないように気をつけながら。