我が家のリビングに招き入れた健太くんに、
私は自分のアルバムを見せた。

この日のために、クローゼットの中から出しておいたアルバムだ。
アルバムの中では、お母さんと小さな私が手を繋いで笑っている。

記憶の中で薄れつつあるお母さんの顔を、
私は写真を見ることでなんとか保っている気がする。
それほど多くないお母さんの写真は、これ以上増えることは決してない。

健太くんがアルバムのページをめくると、
お母さんの姿は消え、小学生の私、中学生の私が順番に現れた。

「うそだ。こんなこと、あるわけない」

ずっと黙ってアルバムを見ていた健太くんが、絞り出すように呟いた。

無理もないと思う。
彼が知っているのは五歳までの姉なのに、
そこから先の写真を見せられたわけだし。

誰もいない家に男子を招き入れようなんて思ったのは、
仮にもこの子が「弟」だから。

呆然とする弟を、私は赤紫のマグカップでカフェラテを飲みながら見つめる。

やっぱり似てる。血が繋がってるんだな。

初めて会った時より太くなった首。
うっすらヒゲの生えた口元。
アルバムの中の若い父と違うのは、お母さん譲りの二重の目だけ。