「嘘だ」

驚きと怒りがごちゃまぜになった顔。

「嘘じゃないよ」

「そんな偶然、あるわけないし。
しかも、死んだ姉の名前まで名乗って、
どういうつもりですか? 幽霊かよ」

「確かに。幽霊みたいなものかもね」

「からかわないでください!」

怒っているのに、言葉が崩れない。
素直で、まっすぐで。
この子、きっと大事に育てられたんだろうな。
ちょっとうらやましい。

だからってわけじゃないけど、私は自分の生徒手帳を渡した。
この日のために挟んでおいた、あの事故の新聞記事のコピーも一緒に。

「え……え、え!?」

健太くんの目が、新聞記事のコピーと生徒手帳と私を行き来する。

「一緒に来て」

そう言うと、私は健太くんの返事を待たずに、横浜方面の電車に乗った。