その日の帰りのことだった。
駅のホームに上がると、
うちの学校の夏服を着た男子が、頭を押さえてベンチに座り込んでいた。

「大丈夫?」

もしかして、という予感は当たった。

「さおりさん……」

とっさに周りを見ると、ホームには
私と同じ冬服のセーラー服のグループがいた。

今回は、健太くんがこっちに来たってことか。

「めまいなら、すぐに治まると思うよ」

健太くんが目を見開く。
どうしてわかるんだって顔。
まあ、このことに関しては、私の方が先輩だと思う。

彼には聞きたいことがありすぎた。
そのためには、まずはこっちのペースに持ち込まないと。

だから、「あの」と言いかけた健太くんを遮るように尋ねた。

「健太くんのお父さんとお母さんって、何て名前?」

怪訝な顔をしながら、答えてくれた。
ほんと、素直な子だ。

「八月一日光春と……ゆかりです」

そうきたか。
何だろう、この気持ち。

嬉しいのか寂しいのか、自分でもよく分からない。
私は思わず大きく息を吐いた。

「同じだ。私のお父さんとお母さんと」

健太くんの顔色が一瞬で変わる。