からかうようなパン田くんに、
私は思いっきり否定した。

「友だちの彼氏だから、私は全然。うん」

何でこんなに動揺してるんだ、私。

「それよりパン田くんの進路の話、まだ聞いてなかったよね」

強引に話を変えたのに、パン田くんは付き合ってくれた。
やっぱりパン田くんは優しい。

「僕、管理栄養士になろうと思うんだ」

「管理栄養士?」

うん、と真面目な顔でパン田くんがうなずく。

「でも、うちの大学にも栄養学部ってあるよね?」

「うん。ただ、僕がやりたいのは、
アスリートの食事を見るスポーツ栄養なの。
選手としての夢は叶わなかったけど、
違う形でスポーツに関わりたいと思って。
せっかくだから、有名な先生がいる大学で勉強しようと思って」

そう話すパン田くんの顔は、
ファミレスで夢を語っていた直規とそっくりだ。

「そうなんだ。頑張ってね。応援するよ」

うん、とパン田くんがはにかむ。

何だか寂しい。

パン田くんも直規も、どんどん先に行ってしまう。
なのに私は夢も見つけられないまま、友だちまで失くしそうで。

からんだ枝は、いったい私をどうするつもりなんだろう。

一人取り残されたような気持ちで食べるお弁当は、
あんまり味がしなかった。