ちらりと横を見れば、女子五人が、ある一人の女子を取り囲んでキャッキャと騒いでいた。
決して五人が、一人の子に対して嫌がらせをしている訳では無い。だって囲まれている女子はこのクラスのお姫様だから。

「え、ちょっとまってよー！里穂ってば彼氏もちなんて初耳なんだけど！」

「しかも大学生とかやばすぎ」

「さすが里穂。可愛い子は違うわぁ」

盗み聞きをしている訳じゃない。ただ、まるで見せつけるかのように大きな声で話すものだから、自然と耳に入ってしまうだけ、だと思いたい。

「そんなことないって。昔から仲良くてよく遊んでたから、、」

眉を下げて、はにかんだように笑う彼女、里穂ちゃんはそう言いながらも嬉しそうだった。里穂ちゃんを包み込む雰囲気が「幸せ」といっているかのように明るくて温かかった。それを素直に受け入れることが出来ない私は、ひねくれているのかもしれない。

「彼氏の写真見せてよー！」

「えぇ、恥ずかしいな」

そんな楽しそうなやり取りが聞こえる。里穂ちゃんの手元はここからじゃ見えないけど、周りの子たちの盛り上がりようを見れば、彼氏の写真を見せたのは一目瞭然だった。
里穂ちゃんを取り囲んでた一人の女子が私の机に勢いよくぶつかった。ガタンッという派手な音を立てたが、当の本人は話に花を咲かせていてこちらをチラリとも見ない。まぁ、いいんだけどさ。ちょっとごめんねくらいあってもよくない？そんなことをぼんやりと思っていた時に声をかけてきたのは意外な人物だった。

「あっ。ごめんね上羅さん。今机にぶつかっちゃってたよね」

声の主は里穂ちゃんだった。里穂ちゃんがぶつかってきたわけじゃないのに、まるで自分のことのように心底申し訳なさそうに謝ってきた。

「えっうそ。全然気づかなかった〜！ごめんね上羅さん」