もうしばらくは関わり合いになりたくない!
……とはいっても、
天敵はカフェの外で待ち伏せていた
「―― よっ。また、会ったな」
悠里はガン無視でエレベーターホールへ
向かおうとする。
椎名はその悠里の腕をすかさず掴んだ。
周囲にいる人々は、
通りすがりの人達まで、
悠里と椎名の動向に興味津々だ。
「蹴っ飛ばされたいですか?」
「いやぁ~、参った。俺って結構Mっ気あったん
かなぁ。あれからお前の事思い出して、2回も
ヌイちゃったよ~」
「信じらんないっ!」
椎名は”蹴っ飛ばされ防止”の為、
悠里をぐいっと抱き寄せた。
「変態な上に無節操な欲情魔」
「ありがと」
「大声出すから」
「あの時みたいに?」
―― あの時。
つまり、情熱的なキスを交わしてしまった、
あの時を指しているのだろう……。
情事の一部始終をまざまざと思い出し、
かぁぁぁっと顔を真赤にする悠里。
「そのカオ、唆るねぇ ―― 付き合え」
悠里の腕を掴んだまま、階段に向かってズンズン
歩き出す。
「って、私はまだ午後の ――」
「勤務は欠席すると上司に伝えておいた」
「そんな勝手に ――!」
「四の五の言わずに黙って着いて来いっ。
絶対悪いようにはしない」
いいえ!
あなたと一緒にいるってこと自体。
悪い事が起きる前兆としか思えないんですが?
***** ***** *****
結局、あれよあれよという間に外へ連れ出されて、
あつし他ほとんどの男子が羨望の眼差しで見ていた
レクサスLFAの助手席へ押し込まれ ――、
「さぁ、シートベルト締めて~?」
悠里は、股間を蹴り上げてまで逃げた男の
運転する車で何処へか? 連れて行かれる。
そして悠里は乗ってから気が付いた。
この車……うちの会社のおんぼろ社用車よか、
よっぽど乗り心地ええかも……。
車はとても滑らかに走り出したが。
イザって時すぐに逃げられるよう、
悠里の手はシートベルトを外すスイッチと
ドアノブにずっと掛けられたままだ。
傍目にも緊張しているのがはっきり分かる。
「参ったなぁ。僕ってそんな信用ない?」
「(はっきり即答)はい」
沈黙…………
こんなおっさんと共通する話題などないと思うが、
こんな沈黙には耐えられない……。
何か喋らないと……。
「椎名くんって一応会社員でしょ? 平日の
真っ昼間からふらふら遊び呆けててええん?」
悠里は椎名に問うた。
「歯に衣を着せない物言い……そんなに僕の事
嫌い?」
「あら、傷ついた?」
「ふふふ。まさか! そんなヤワじゃないよ」
「!?」 何気にムカつく!