「乾杯~!!」


 目の前に座る男性陣は20代前半位。

 頑張って利沙が集めた女性群は
 キャピキャピしてるってイメージが強いけど
 さずがにいずれ劣らぬ美人揃いだ。

 ひと通り自己紹介をした後
 私から1番離れた男の人が


「椎名遅れるってー」


 と大きな声を出した。


「椎名って?」


 利沙が聞くと
 私の正面に座っていた男性が


「世の女性が好きなモノ全部持ってる男だよ」


 と笑っていた。

 どんな人なんだろう……


 それから小一時間ほどで、
 皆さんお酒の力ですっかり賑やかになっていた。


 私は? と言うと……
 飲み物も食べ物もあまり進まず、
 ノリを合わせるのに精一杯だった。



「おっ! もうすぐ椎名来るって!」


 また1人の男性が言う。


「ようやくー? 楽しみぃ!」


 女性陣も盛り上がる。


 数分後 ――、


『悪い! 遅くなった』


 後ろから声がして
 振り返ると、少し乱れたスーツを着た男性が
 立っていたんだけど……。


「まじで遅い!」

「ごめんごめん。
 ―― あっ、とりあえず生ください」


 通りかけた店員に飲み物を注文した後、
 私の隣にどかっと座った。

 フルーティーな香りがふんわりと香る。

 肩が少し当たる距離。


「どうですか! 皆さん!
 俺らイチオシの男でございます」

「うるせぇよ。もう酔ってるのか」


 この人が来てより一層賑やかになった。


「あ、俺、椎名 和弥です。宜しく」


 すこしぶっきらぼうに聞こえたその男性は、
 先日あった同窓会でちょっと気まずい別れ方をして
 しまった、あの椎名くんだった。

 きっと自己紹介なんて気恥ずかしいんだろう。

 チラッと隣の椎名くんを見ると
 目が合ってしまった。


「よろしくね」


 中学時代の同窓生なのに
 この場では初対面として振る舞う彼の、
 そんな余裕ある笑顔にドキッと胸が高鳴った。


 それから、
 上手く話に乗れない私に気を遣ってか、


「血液型なに?」
「星座は?」


 ほとんどひと言で終わってしまうような
 質問ばかりだったが、

 私にとってはとても有り難かった。

 みんなで話している時
 椎名くんの横顔をボーッと見つめていた。

 整った怜悧な横顔


「ねぇねぇ、キミ、悠里ちゃんだっけ?
 お酒進んでないじゃん! 何杯目?」


 突然真ん中に座っていた男の人に
 名前を呼ばれアタフタしてしまう私。


「えっ?! あ、まだ二杯目、かな……」


 利沙は約束通り”悠里はまだ未成年だから”と
 ノンアルコールを注文してくれたけど。
 椎名くんが来て、仕切り直しの乾杯した時、
 この真ん中の男性に勧められたカクテルを
 口にした。
 
 
「駄目じゃん! 早く飲んで飲んで」


 男の人は私のグラスを持って、
 私の口元の距離まで差し出す。


「一気飲みしてよ~」


 その一言で周りもやれやれと言い出す。


「ちょっ……それはやめようよ」


利沙が止めに入ってくれたが、


「え~~?ノリ悪くない?」


 1人の女が甲高い声で言う。

 このままだと、
 利沙までノリ悪い人みたいになっちゃう。

 迷惑かけられない。

 ……飲むしかない?

 グラスを受け取り、口元へ運ぶ。

 みんなの目線で緊張してしまい、
 手が震える。

 まだ半分もある量を
 一気飲みなんてできるのかな……

 でもやらないとだよね。

 決心しグラスを傾けた、その時 ――