もし、運命の女神様がいるんだとしたら……
 彼女はきっと、かなりの悪戯好きなんだと思う。
 


「ユーリぃー、お昼ご飯行こ~」


 控室に置いてある会社パソコンで学校の課題を
 片付けてる私の腕を引く利沙。
 

「あぁ―― あともう少し……!」


 ボチッっとエンターキーを押し、

 よしっ! 送信完了!

 最近の高校はデジタル化が推奨されていて
 ほとんどの課題提出が各教科の先生のアドレスへ
 送信する事になっているのだ。
 

 お弁当が入ったバッグを持って
 利沙と場所を移動する。


「あー! ようやく休み時間」


 いつもより機嫌のいい利沙。


「何か良いことあった?」

「んふふっ。実は今日合コンあってさ」

「あ、だから今日は一段と綺麗なんだね」

「お世辞は結構! はぁー楽しみぃ!」


 ウキウキしている利沙って
 本当にキラキラ輝いて”可愛い”と思った。


 でも、定時終業のあと 
 長い仕事が終わり、
 着替えのため控室に戻ると

 さっきまでウキウキしていた利沙が
 世界の不幸を一身に背負ったような雰囲気で
 長椅子にうなだれていた。
 
 
「……大丈夫? 利沙」


 利沙は力なく首を横に振った。
 
 
「何があったの?」  

「……聞いてくれる?」


 私は利沙の隣に座った。
 

「それがさ、予定してた女の子が1人来られなく
 なっちゃってぇ……」

「ふ~ん……それって、そんなに大変なこと?」


 合コン経験のない私はなにがそんなに大変なのか
 わからなかった。


「当たり前じゃない! だから一生のお願い」

「なに?」

「合コンの助っ人に来て!」


 顔の前で両手を合わせる利沙。


「えぇ!? 私に合コンなんて無理だよぉ」

「大丈夫! 私がフォローするし」

「着替えないし。まだ未成年だし」

「悠里は元が美形だから着飾んなくても大丈夫!
 アルコールは私がシャットアウトしてあげる」


 利沙の勢いに思わず黙り込んだ私を
 じゃ、よろしく! と、
 半ば強引に会社から連れ出した。