乾杯の後はそれぞれの席に座って
 隣の人間との会話をしていたが、
 30分も過ぎると席なんてあってないようなものに
 なっていた。

 ……私はまだ自分の席に座ったままで
 料理にはしをつけていた。

 すると、今まで私の隣にいた女子が男子と
 入れ替わった。


「……お久しぶり悠里」

「――うん、久しぶりだね椎名くん。
 さっきはメールありがとう」


 ほっこり笑う彼・椎名 和弥は、
 お父さんが不慮の事故で急逝するという事さえ
 なければ私達70期卒業生の総代になってた男子だ。

 そして*年前、いよいよ帰郷するといった数時間前、
 いつも学校帰りに寄り道していたカフェへ
 呼び出されて ――。


 ====   ====

『ボ、ボクと、け、結婚を前提として
 付き合って下さいっ』

 ====   ====


 告白された。
 15年間の長い人生に於いて初めての告白は、
 返事に迷っている余裕なんかない、
 性急なものだった。

 とにかく彼は急いでいた ―― 
 なんでも、実家へ帰ればすぐにでも許嫁と婚約
 させられそうだから、って。

 そりゃあ彼だって、散々悩んだのかもしれないけど、
 自分が家業を継ぐ為実家へ帰るって間際に
 言わなくてもいいじゃん。

 結局私は椎名くんのとても不安そうに揺らぐ瞳を
 チラチラと見ながら、か細い声で
 「――ごめんなさい」って、いうのがやっとだった。