健太郎先輩との誕生日デートから帰宅した姉は、カランコエ渡したよ、と私に報告した。
「ありがとう、お姉ちゃん」
そう言うと姉は、何か言いたそうに少し私を見たけれど、結局、ううん、どうしたしまして、とだけ返し、それきり何も言わなかった。
先輩のことがずっと好きだった。誰かに対して好きだと思う気持ちを、先輩以外に感じたことは無い。だからこの思いが正しいのかどうかはわからない。好きだと伝えておきたかった。今となっては、伝えることに何の意味もない。せめて思うのは、どうか幸せでありますように、ということだけだ。
カランコエの花言葉は、“幸福を告げる”、“あなたを守る”。

姉と健太郎先輩はこの先どうなるのだろうか。付き合うんだろうか。結婚するんだろうか。私にはわからない。わからなくていい。伝えたいことは伝えられたのだから。
まもってね、カランコエ。健太郎先輩と、それからついでに、私の姉を。
そう思いながら、眠りについた。