兎に角無事に終わり、令美は疲れて舞台袖に座り込んだ。


「東雲くん。」

名前を呼ばれて振り返ると、マネージャーの高橋さんが立っていた。


「今日はお疲れ様。あの、単刀直入に聞くんだけど、うちの事務所に入らないか?」


えっ…?

うちの事務所にって、つまりは芸能界に入るってことー?


「君の演技には人を惹きつける魅力がある。やってみないか。この世界で君の実力を試してみるんだ。」


私の、実力…


「返事は急がなくていいんだ。家に帰ってご家族にも相談して」


***

校庭では、後夜祭のキャンプファイヤーでみんなが盛り上がっていた。


令美は一人、教室の机に座っていた。

高橋さんに言われた言葉が頭の中を何回も駆け巡った。

私が、芸能界へー


ガラッ


すると、教室のドアが開き、司馬くんが入って来た。


「あ、こんなとこに居た。」


「ちょっと司馬くん‼︎何がフリよ‼︎ちゃんとここに当たってたんだから‼︎」


令美はツカツカと司馬の前にやって来てキスされた場所を指差して見せた。


「……フリじゃ嫌だった?」


カァッ‼︎


令美は顔を赤くした。


「違っ‼︎」「フリが嫌だったら、芸能界に入れ。」


司馬は真剣な瞳で真っ直ぐに令美を見た。


「お前には才能がある。」


ドクン…ドクン…

ダメ、そんな風に見つめないで…


頭が冷静に判断出来なくなる…


「…うん。」

こうして、平凡な女子高生だった私の人生は大きく変わる事になる。