「ふー、」
令美は舞台端に座って一息ついた。
カメラがあると思うと緊張して肩がこる…
「…ん。」
すると、司馬がペットボトルを差し出した。
これ、司馬くんがCMやってる飲料水だ。
「差し入れ。」
「あ、ありがとう。」
二人並んでペットボトルを飲んだ。
な、なによ…
また何か嫌味でも言ってくるのかも、、
令美は司馬の隣で構えていると、彼は立ち上がった。
「…お前の演技は、演技してます‼︎って感じが伝わり過ぎる。自分を抜け出して他人に成り代る。それだけじゃ駄目だ。成り代るじゃない、その人物になるんだ。そうすると、見てる人は自然と引き込まれる。」
令美は司馬を見上げた。
「…次のシーンはお前自身を出してみろ。」
次のシーン…
台本を見ると、カナが夢を諦めず留学に出発するシーン。
自分自身を出すー
「よーし、じゃあラスト始めるよ。」
先生の掛け声で、令美はきゅっと手を握りしめた。
『夢を叶えてこい‼︎カナ、』
裕也の言葉に、たくさんの荷物を降ろしてカナは振り返った。
飛び切りの笑顔で裕也に手を振る。
『裕也!私、夢を追い続けてくる!!いってきます!』
令美の演技とその笑顔に、先生や部員を始め、テレビスタッフや司馬の事務所の人もも思わず見惚れてしまった。
そして、司馬はふっと微笑んだ。