【登場人物紹介】
真智《まち》
※自称 あたし
本人いわく、
実験が大好きな好奇心旺盛で優しく正義感の強いリケジョ中学生~(笑)
科学部の部長さん。
科学部の中では一番背が低い。
右上でこげ茶色の髪を短く結んでいる。
服装は赤と桃色の半袖ちゃんちゃんこと半ズボン。
靴下は履かずワラジを履いている。
声は、ゲームが擬人化した世界のね●子に似てるとか似てないとか。
自分は 理系女子《リケジョ》界のアイドル、『リケドル』だと本気で思っているらしい。
ちなみにそんな真智について友達は、
腹黒系女子《バケジョ》界のアイドル、
『バケドル』だと本気で思っているらしい。
四葉
※語尾を伸ばす 「かな~ etc」
元々真智とは科学部で一緒だったが、
クラス替えで真智と同じクラスになった。
文芸部との掛け持ちである。
真智を含めた仲良し3人組の一人。
実は中学生でありながら凄腕小説家として
プロデビューしている天才中学生ライター。
真面目でおっとりした性格で、眠くなるような喋り方をする。
しかし、そんな素顔とは裏腹に、一つ困った性格の持ち主でもあるようだ……。
実は彼女、真智警部補から複数の容疑で現在指名手配中である。
諸々の事情からか、アメニティや試飲試食はもちろん、借りパク疑惑さえ日常茶飯事な彼女。
四葉に家に遊びに来られた複数の被害者達から、
証言1
【冷蔵庫の中の食べかけや食べ残した食品がそれぞれ、気持ち少なくなっているような気がする】
証言2
【両親に内緒で婆ちゃん家《ち》からくすねていた飲みかけの※お酒や食べかけのおつまみの量が気持ち少なくなっている気がする】
など、日夜真智警部補の元には被害相談や捜索願いの相談があいついでいる。
↑※未成年者の飲酒は法律で固く禁じられています。りけじょ!シリーズは現実社会とは法律の違う異世界(心層世界)での物語であり、未成年者に飲酒を勧めるものではありません。
科学部では、谷先生を抜いて一番背が高い。
銀色の髪のストレートヘアーに赤いU字フレームのオシャレ眼鏡をかけている野生的女子。
宙《そら》
※自称 あたい 男言葉
仲良し3人組の一人。
バリバリの体育会系で、陸上部のキャプテン。
陸上部との掛け持ちで科学部に入部した。
真智言わく、食べる事と運動することしか頭にないらしい。
真智にノートを見せて貰ったことをきっかけに、仲良しになった。
科学部部室のソファーに昼寝に来ることとお菓子を食べに来るのが彼女の日課である。
本人言わく、親の方針でたくましく育てられたらしいが、
下品な言動を平気でする困った性格でもある。
髪型は男子と見間違えるくらいの短髪で、科学部では四葉に次いで身長が2番目に高い。
女子からバレンタインデーに大量のチョコをもらうほどモテモテな中性的イケメン女子である。
谷先生
※自称うち 関西弁のつもり
本名 谷 恵美
真智達のクラス担任で科学部の顧問。
関西弁で話すいい加減でズボラな性格の女性。
しかし正義感は強く、近隣の恥異賭《ちいと》大学で
教授をしている天才数学者でもある。
身長は平均より少し高いくらいで痩せ型、
髪型は黒髪で肩までかかるくらいの長めのポニーテールにしている。
月水博士。
ゲスと呼ばれることも。
痩せ型で丸い眼鏡をかけた髪の毛の少ない男性科学者。
大学の物理の先生
谷先生が大学生の時の物理科目の先生。
新任の若い女性。
谷先生の大学時代のクラスメート達。
グリ
自称 オレ
最近まで清都市の研究施設でモルモットにされていた。
生い立ちなど詳しいことは不明。
【登場人物紹介おわり】
巨大結晶のある次元にたどりつき、あたし達はとにかく愛理栖がいないか手分けして探し回った。
◇よう! えみたん じゃないか?◇
突然、男性の等身大のホログラムがあたし達の目の前に現れた。
「その声は貴様か? 薄井《うすい》休一《きゅういち》!」
◇薄井《うすい》じゃな~い!!
月水《げすい》だ~!!◇
「あー、悪い!
え〜と……、お前って髪の毛無いじゃん?
だからつい間違えちった」
◇君のその失礼極まりない態度は昔と全然変わって無いようだね。
な、えみたん◇
「だから、その呼び方はキモいから止めろと昔から行ってるだろ~が!」
「谷先生、この人と知り合いなんですか?」
あたしは先生に理由を尋ねてみた。
「こいつはな、うちが卒業した大学の元クラスメートだ。
今では世界的な素粒子物理学者で、
理論をまるでヘアースタイルのように
自由に操る様から、
奴は 素粒子のカリスマ美容師と言われているんや。
『奴に髪は無いがな』
大切な事だからもう一度言うぞ。
『奴に髪は無いがな』」
「『髪は無い』……んですね。
そこ、こだわるところなんだぁ……アハハ。
名前は 休一《きゅういち》? え~と、
あ! 一休さんですよね?」
◇うわ~それを言うな~!◇
月水というホログラムの男はうめきだした。
「真智、奴をまくし立てて失意のどん底に陥れたい気持ちはうちにも痛いほどわかるが……」
わかるんか~い!
ってあたしは心の声でツッコミを入れた。
「痛いほどわかるが、奴はハゲ散らかしたその頭を
奴なりに深刻に悩んでいるんだ。そのへんでやめてやれ」
◇うわ~!
エレガントじゃないよ~!
エレガントじゃないよ~!◇
「月水、もちつけ!
素数を数えるんだ!」
「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, …」
「ハハ~、大変ですね~、谷先生……」
あたしは対人関係が個性的すぎる
谷先生が気の毒で気をつかった。
◇君に心配される程僕は落ちぶれていないよ。
それに、僕の事を変人みたいに君は言うけど、
果たして君は普通だったのかな~?◇
「え? 谷先生、昔何かあったの?」
「五月蝿《うるさ》い!」
◇あ~、あれは僕が忘れもしない大学のゼミ。
若い女性が講師の物理のゼミで、先生がみんなに質問したことあったよね?
「【励起《れいき》】は今まで例をあげた以外にも、
電子や陽子、中性子、分子、イオンの入射、衝突や、フォノンなどによるものがあります。
もうすぐ休み時間ですね。
最後にこの問題。
今日説明したまとめですが、
光、熱、電場、磁場などの外場により
引きおこされるものを何て言うでしょうか?
だれか答えわかりますか?」
「…………」
「そうですか。
じゃあ、まだ当てて無いのは谷さんでしたね。
谷さん答えて!」
「ぐ~、すや~……」
「先生~、谷さん寝ています!」
「仕方ないですね~、
月水《げすい》さん、谷さんを起こしてもらえますか?」
「はい。
えみたん、起きて! 当てられてるよ!」
「う~何? うち?」
「谷さんやっと起きましたね?」
「今日説明した、
光、熱、電場、磁場などの外場により
どういう状態になるかわかりますか?」
「へ?
うち、聞いてないからわからへん!
ねえ、ゲス? ノート見せて?」
「ちょっと僕のノート無理やり取り上げないでよ!」
「谷さん、チャイムも鳴りましたし、
早く答えてください。
わかりませんか?」
「わかりました。でも、恥ずかしい……」
「恥ずかしい? 何故ですか?」
「いいえ、大丈夫です。
ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ」
「ぼ?」
「ぼ、勃起します。
……勃起しました」
「!!!!」
「????」
「し~ん」
「あ、あれ?
うちの答え違った?」
「えみたん……、それ励起《れいき》」
「ワハハ、ワハハ、ワハハ、ワハハ、
ワハハ、ワハハ~」
◇僕があの時教えてあげなかったら君はずっと勘違いしたままだったんじゃないか?
その後、若い女性の講師の先生は赤面して慌てて教室を飛び出していったよねw
そして、教室は文字通り爆笑の渦w◇
「五月蝿《うるさ》い! 五月蝿い!
昔の話だ!
ゲスだってそのゼミであんなことやらかしただろ?」
「みなさん、ここは試験に出ます。
ここまでで何か質問はありますか?」
「はい! 先生!」
「月水《げすい》さんですね。
どうぞ」
「先生、その二重スリット実験で、
その時点での光はどんな状態なんですか?」
「いい質問ですね。
その時の光は波です」
「な、な、波?」
「あれ? 月水《げすい》さん、具合が悪いんですか?
大丈夫です?」
「だ、だ、大丈夫ですよ~」
「本当に本当ですか……?
先生は今……ものすごく嫌な予感しかしないんですが……。
ゴホン、
え~ちなみに、並行宇宙という発想もここから生まれたと言われています」
「平行?」
「おい、ゲス! 今それ関係無いぞ!
それに漢字や意味もちゃうし」
◇うちはあの時ああ言ってお前をフォローしてやったのにな◇
「平、平……」
「無駄か~」
「平行、波、
波、平行 」
「は~しゃ~ないわ。
みんな~、危ないから教室から避難してや~!」
「ちょっと谷さん、どうして……?」
「理由は後で説明します。
先生も逃げてください!」
「私は教師です。仕事に誇りを持っていますし、
生徒には必ず向き合ってみせます!」
「やっぱこうなるか~」
「波、平行、波、平行~、
波平行波平行波平行波平行~」
「ね? 月水《げすい》さん、少し落ち着こうか?」
「…………」
「…………」
◇場がひとまず落ち着いた後、
お前は目をまん丸とあけたキモい顔で自分を指差し◇
「んん……、波……平?
……ん?」
◇先生にそう言ってジェスチャーして試していたよな?◇
「え? 先生そんなこと
言ってない!言ってない!!
言っていませんよ~。
先生は波平なんて一言も言っていませんからね~」
「ほらぁ~、先生 今 【波平】って言ったぁ~!
うわ~! うわ~! うわ~!」
「ちょっと? 月水《げすい》さん?」
先生の心の声
{ったく、なんやコイツ……、
すげぇめんどくせぇ~。死ぬ程うぜぇ~。
その少ねぇ髪の毛、根こそぎ全部むしったろかぁ~?}
「先生、逃げて!
奴に、月水《げすい》にホニャララを連想される言葉は禁句なんです!」
「え~どうしましょう?」
「うちは対処法知ってますんで。
月水《げすい》、素数や! 素数を数えるんや!」
「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, …」
「よし、すごいぞ、月水《げすい》、その調子や!」
「……?」
「どうした? 月水《げすい》?」
「僕が波平?
そんなのエレガントじゃないよ~!
エレガントじゃないよ~!」
「谷さん、彼大丈夫ですかね?」
「おい、俺たち心配で教室に持ってきたんだが」
「僕らにも何か手伝えることはかいかな?」
「一緒にコイツが落ち着く方法を考えてや!」
「素数は?」
「もう試した!」
「自然対数の底はどう?」
「それはまだや!」
「ね~月水《げすい》くん?
2.71828 18284 はい、続けて!」
「59045 23536 02874 71352 …、
……、うわ~!
波平なんてエレガントじゃないよ~!
助けてママー!」
「おい、いきなり自然対数の底は刺激が強すぎるだろ?
円周率が基本だろ?
な?月水《げすい》、円周率言えるよな?」
「3.14159265……、
ママ~!」
「駄目だ~。
誰か他に策はないか?」
「ルート2は?」
「基本の基だな! それいってみようぜ!」
「全く、本当にあの時の月水《げすい》は手におえんかったぞ!」
◇あの事は忘れてくれ……頼むよ~えみたん?◇
「うっせ~! だからその呼び方するなって言ってるだろ!」
谷先生はまるでヤンキーのように媚びる月水《げすい》にキレた。
「そんな言い方酷いよー!
僕は、ママにも叱られたこと無いのにー!!」
「駄目だこいつ。早くなんとかしないと……。
お前ホンマウザいわ!
テメエはもう
チンでてぃまえー!!
あーもう!
だいぶん話が脱線したが、単刀直入に聞こう!
うちらの街をあんな風にめちゃくちゃにしたのはてめえだな、
月水《げすい》?」
◇ま~半分正解だね◇
「半分?
どういうことだ……?」
◇君たちの街がめちゃくちゃになった大元の責任は
君たちにある◇
「うちらに?
それは何故や?」
◇君たちがあの少女が住む19万6883次元に興味本位で行ったりしたから、
関係が生まれ巻き込まれてしまったんだよ◇
「あの少女だと?」
◇僕があの娘の暴走のきっかけを作ってしまったのは
素直に認めるよ◇
「きっかけだと?」
◇僕はこれでも各国の首脳と繋がりがあってね、
数理研究の質の見直しを進言して回っているんだ……◇
「ああ、うちは知ってる!
お前のせいでうちはアメリカとイギリスの大学、
清都大学からお払い箱にされたからな!」
◇わかってくれよ~、
君の宇宙の本質を探す基礎研究は、僕達の研究の依頼主である
国家やパトロンの実益に繋がらないじゃないか?◇
「だからってきさまはうちのように基礎研究をメインに扱う世界中の数理学者達を弾圧しているのか?」
◇弾圧なんてひどいな~、
僕はちゃんと、一人も漏らす事無く再雇用先の大学も手配しているんだよ◇
「貴様~!
それで、うちのように物理や数学から宇宙の本質を研究する学者達の研究をやめさせて原子力の研究をさせているんだな?」
◇そうだよ。
まあまあ、えみたん落ち着いて。
君はまるで、量子論のコペンハーゲン解釈に神はサイコロを振らないって言って駄々をこねたアインシュタインみたいだよ。
不確定性原理で真相は絶対に知ることが出来ない事は逆説的に
証明され科学者達はみんはそれに反論できないんじゃないか?
もう科学が心理を探し夢をみるバブル時代は終わったんだよ。
だから僕はね、君も早く 実在論的基礎研究《ゆめ》から覚めてスポンサーからの需要と資金提供があっての実証論的研究をすべきだと思うんだ。
ね? これが一番合理的ですばらしいことだろう?◇
「ふざけるな!
それに、お前は科学者としての大切な心を無くしている!
お前のやっていることは
核兵器、軍事利用だろ!
お前はパトロンの為なら戦争という人殺しにだって平気で加担するのか?
答えろ!」
◇科学者の戦争への加担は沢山の前例があって何も
今に始まったことじゃないよ。
それに、インターネットのようにそこから生み出された技術が今の便利な暮らしに役にたっている例だってたくさんあるんだ。
それと、僕は原子力の研究分野で原子力発電だって推進しているんた。
あとは、教科書の内容を……◇
「教科書?
月水《げすい》! お前だな?」
谷先生は泣きながらそう言い続けた。
「お国の都合とかで、数学や科学の本当の楽しさを子供達に教えないのは!
うちら大人の勝手な都合で、子供達の未来を、可能性を奪うなよ!」
◇まあまあ落ち着きたまえ◇
「お前忘れたんか?
うちとお前に科学と数学の楽しさを教えてくれた先生を……。
先生は、実験の準備で休日も返上し、
学校の方針に逆らって自分の立場を危うくしてまで、
そこまでして、うちら二人に数学の、科学の、本当の楽しさを教えてくれたやないか?」
◇恩師の先生には感謝している。
でも、それは過去だよ◇
「過去だと?」
◇とにかく、僕は少女の暴走のきっかけを作ってしまっただけなんだ。
元に戻すには、その少女に頼むしかない。
それじゃ僕は忙しいから失礼するよ◇
「コラ待て! 月水《げすい》!」
谷先生は月水《げすい》って言う人を引き留めようとしたが、
もうその人は消えた後だった。
わたしは愛理栖探しを再開し辺りを見渡した。
「あ、グリ? 何してるの?」
「…………」
グリはあたしの質問には何も答えず、
ただ、真剣に巨大結晶に向かい合い、
反射して映る自分の姿をじっと見つめているようだった。
そして、グリはそっと右手で直接結晶に触れた。
「キュュュュ~ン!」
突然、グリの目の前の結晶にブラックホールのような穴があき、物凄い吸引でグリをひと飲みで吸い込んでしまった。
「グ、グリ……?」
あたしは、そのあまりに突然の事態に
ただ唖然として他に何も発することが出来なかった。
真智《まち》
※自称 あたし
本人いわく、
実験が大好きな好奇心旺盛で優しく正義感の強いリケジョ中学生~(笑)
科学部の部長さん。
科学部の中では一番背が低い。
右上でこげ茶色の髪を短く結んでいる。
服装は赤と桃色の半袖ちゃんちゃんこと半ズボン。
靴下は履かずワラジを履いている。
声は、ゲームが擬人化した世界のね●子に似てるとか似てないとか。
自分は 理系女子《リケジョ》界のアイドル、『リケドル』だと本気で思っているらしい。
ちなみにそんな真智について友達は、
腹黒系女子《バケジョ》界のアイドル、
『バケドル』だと本気で思っているらしい。
四葉
※語尾を伸ばす 「かな~ etc」
元々真智とは科学部で一緒だったが、
クラス替えで真智と同じクラスになった。
文芸部との掛け持ちである。
真智を含めた仲良し3人組の一人。
実は中学生でありながら凄腕小説家として
プロデビューしている天才中学生ライター。
真面目でおっとりした性格で、眠くなるような喋り方をする。
しかし、そんな素顔とは裏腹に、一つ困った性格の持ち主でもあるようだ……。
実は彼女、真智警部補から複数の容疑で現在指名手配中である。
諸々の事情からか、アメニティや試飲試食はもちろん、借りパク疑惑さえ日常茶飯事な彼女。
四葉に家に遊びに来られた複数の被害者達から、
証言1
【冷蔵庫の中の食べかけや食べ残した食品がそれぞれ、気持ち少なくなっているような気がする】
証言2
【両親に内緒で婆ちゃん家《ち》からくすねていた飲みかけの※お酒や食べかけのおつまみの量が気持ち少なくなっている気がする】
など、日夜真智警部補の元には被害相談や捜索願いの相談があいついでいる。
↑※未成年者の飲酒は法律で固く禁じられています。りけじょ!シリーズは現実社会とは法律の違う異世界(心層世界)での物語であり、未成年者に飲酒を勧めるものではありません。
科学部では、谷先生を抜いて一番背が高い。
銀色の髪のストレートヘアーに赤いU字フレームのオシャレ眼鏡をかけている野生的女子。
宙《そら》
※自称 あたい 男言葉
仲良し3人組の一人。
バリバリの体育会系で、陸上部のキャプテン。
陸上部との掛け持ちで科学部に入部した。
真智言わく、食べる事と運動することしか頭にないらしい。
真智にノートを見せて貰ったことをきっかけに、仲良しになった。
科学部部室のソファーに昼寝に来ることとお菓子を食べに来るのが彼女の日課である。
本人言わく、親の方針でたくましく育てられたらしいが、
下品な言動を平気でする困った性格でもある。
髪型は男子と見間違えるくらいの短髪で、科学部では四葉に次いで身長が2番目に高い。
女子からバレンタインデーに大量のチョコをもらうほどモテモテな中性的イケメン女子である。
谷先生
※自称うち 関西弁のつもり
本名 谷 恵美
真智達のクラス担任で科学部の顧問。
関西弁で話すいい加減でズボラな性格の女性。
しかし正義感は強く、近隣の恥異賭《ちいと》大学で
教授をしている天才数学者でもある。
身長は平均より少し高いくらいで痩せ型、
髪型は黒髪で肩までかかるくらいの長めのポニーテールにしている。
月水博士。
ゲスと呼ばれることも。
痩せ型で丸い眼鏡をかけた髪の毛の少ない男性科学者。
大学の物理の先生
谷先生が大学生の時の物理科目の先生。
新任の若い女性。
谷先生の大学時代のクラスメート達。
グリ
自称 オレ
最近まで清都市の研究施設でモルモットにされていた。
生い立ちなど詳しいことは不明。
【登場人物紹介おわり】
巨大結晶のある次元にたどりつき、あたし達はとにかく愛理栖がいないか手分けして探し回った。
◇よう! えみたん じゃないか?◇
突然、男性の等身大のホログラムがあたし達の目の前に現れた。
「その声は貴様か? 薄井《うすい》休一《きゅういち》!」
◇薄井《うすい》じゃな~い!!
月水《げすい》だ~!!◇
「あー、悪い!
え〜と……、お前って髪の毛無いじゃん?
だからつい間違えちった」
◇君のその失礼極まりない態度は昔と全然変わって無いようだね。
な、えみたん◇
「だから、その呼び方はキモいから止めろと昔から行ってるだろ~が!」
「谷先生、この人と知り合いなんですか?」
あたしは先生に理由を尋ねてみた。
「こいつはな、うちが卒業した大学の元クラスメートだ。
今では世界的な素粒子物理学者で、
理論をまるでヘアースタイルのように
自由に操る様から、
奴は 素粒子のカリスマ美容師と言われているんや。
『奴に髪は無いがな』
大切な事だからもう一度言うぞ。
『奴に髪は無いがな』」
「『髪は無い』……んですね。
そこ、こだわるところなんだぁ……アハハ。
名前は 休一《きゅういち》? え~と、
あ! 一休さんですよね?」
◇うわ~それを言うな~!◇
月水というホログラムの男はうめきだした。
「真智、奴をまくし立てて失意のどん底に陥れたい気持ちはうちにも痛いほどわかるが……」
わかるんか~い!
ってあたしは心の声でツッコミを入れた。
「痛いほどわかるが、奴はハゲ散らかしたその頭を
奴なりに深刻に悩んでいるんだ。そのへんでやめてやれ」
◇うわ~!
エレガントじゃないよ~!
エレガントじゃないよ~!◇
「月水、もちつけ!
素数を数えるんだ!」
「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, …」
「ハハ~、大変ですね~、谷先生……」
あたしは対人関係が個性的すぎる
谷先生が気の毒で気をつかった。
◇君に心配される程僕は落ちぶれていないよ。
それに、僕の事を変人みたいに君は言うけど、
果たして君は普通だったのかな~?◇
「え? 谷先生、昔何かあったの?」
「五月蝿《うるさ》い!」
◇あ~、あれは僕が忘れもしない大学のゼミ。
若い女性が講師の物理のゼミで、先生がみんなに質問したことあったよね?
「【励起《れいき》】は今まで例をあげた以外にも、
電子や陽子、中性子、分子、イオンの入射、衝突や、フォノンなどによるものがあります。
もうすぐ休み時間ですね。
最後にこの問題。
今日説明したまとめですが、
光、熱、電場、磁場などの外場により
引きおこされるものを何て言うでしょうか?
だれか答えわかりますか?」
「…………」
「そうですか。
じゃあ、まだ当てて無いのは谷さんでしたね。
谷さん答えて!」
「ぐ~、すや~……」
「先生~、谷さん寝ています!」
「仕方ないですね~、
月水《げすい》さん、谷さんを起こしてもらえますか?」
「はい。
えみたん、起きて! 当てられてるよ!」
「う~何? うち?」
「谷さんやっと起きましたね?」
「今日説明した、
光、熱、電場、磁場などの外場により
どういう状態になるかわかりますか?」
「へ?
うち、聞いてないからわからへん!
ねえ、ゲス? ノート見せて?」
「ちょっと僕のノート無理やり取り上げないでよ!」
「谷さん、チャイムも鳴りましたし、
早く答えてください。
わかりませんか?」
「わかりました。でも、恥ずかしい……」
「恥ずかしい? 何故ですか?」
「いいえ、大丈夫です。
ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ」
「ぼ?」
「ぼ、勃起します。
……勃起しました」
「!!!!」
「????」
「し~ん」
「あ、あれ?
うちの答え違った?」
「えみたん……、それ励起《れいき》」
「ワハハ、ワハハ、ワハハ、ワハハ、
ワハハ、ワハハ~」
◇僕があの時教えてあげなかったら君はずっと勘違いしたままだったんじゃないか?
その後、若い女性の講師の先生は赤面して慌てて教室を飛び出していったよねw
そして、教室は文字通り爆笑の渦w◇
「五月蝿《うるさ》い! 五月蝿い!
昔の話だ!
ゲスだってそのゼミであんなことやらかしただろ?」
「みなさん、ここは試験に出ます。
ここまでで何か質問はありますか?」
「はい! 先生!」
「月水《げすい》さんですね。
どうぞ」
「先生、その二重スリット実験で、
その時点での光はどんな状態なんですか?」
「いい質問ですね。
その時の光は波です」
「な、な、波?」
「あれ? 月水《げすい》さん、具合が悪いんですか?
大丈夫です?」
「だ、だ、大丈夫ですよ~」
「本当に本当ですか……?
先生は今……ものすごく嫌な予感しかしないんですが……。
ゴホン、
え~ちなみに、並行宇宙という発想もここから生まれたと言われています」
「平行?」
「おい、ゲス! 今それ関係無いぞ!
それに漢字や意味もちゃうし」
◇うちはあの時ああ言ってお前をフォローしてやったのにな◇
「平、平……」
「無駄か~」
「平行、波、
波、平行 」
「は~しゃ~ないわ。
みんな~、危ないから教室から避難してや~!」
「ちょっと谷さん、どうして……?」
「理由は後で説明します。
先生も逃げてください!」
「私は教師です。仕事に誇りを持っていますし、
生徒には必ず向き合ってみせます!」
「やっぱこうなるか~」
「波、平行、波、平行~、
波平行波平行波平行波平行~」
「ね? 月水《げすい》さん、少し落ち着こうか?」
「…………」
「…………」
◇場がひとまず落ち着いた後、
お前は目をまん丸とあけたキモい顔で自分を指差し◇
「んん……、波……平?
……ん?」
◇先生にそう言ってジェスチャーして試していたよな?◇
「え? 先生そんなこと
言ってない!言ってない!!
言っていませんよ~。
先生は波平なんて一言も言っていませんからね~」
「ほらぁ~、先生 今 【波平】って言ったぁ~!
うわ~! うわ~! うわ~!」
「ちょっと? 月水《げすい》さん?」
先生の心の声
{ったく、なんやコイツ……、
すげぇめんどくせぇ~。死ぬ程うぜぇ~。
その少ねぇ髪の毛、根こそぎ全部むしったろかぁ~?}
「先生、逃げて!
奴に、月水《げすい》にホニャララを連想される言葉は禁句なんです!」
「え~どうしましょう?」
「うちは対処法知ってますんで。
月水《げすい》、素数や! 素数を数えるんや!」
「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, …」
「よし、すごいぞ、月水《げすい》、その調子や!」
「……?」
「どうした? 月水《げすい》?」
「僕が波平?
そんなのエレガントじゃないよ~!
エレガントじゃないよ~!」
「谷さん、彼大丈夫ですかね?」
「おい、俺たち心配で教室に持ってきたんだが」
「僕らにも何か手伝えることはかいかな?」
「一緒にコイツが落ち着く方法を考えてや!」
「素数は?」
「もう試した!」
「自然対数の底はどう?」
「それはまだや!」
「ね~月水《げすい》くん?
2.71828 18284 はい、続けて!」
「59045 23536 02874 71352 …、
……、うわ~!
波平なんてエレガントじゃないよ~!
助けてママー!」
「おい、いきなり自然対数の底は刺激が強すぎるだろ?
円周率が基本だろ?
な?月水《げすい》、円周率言えるよな?」
「3.14159265……、
ママ~!」
「駄目だ~。
誰か他に策はないか?」
「ルート2は?」
「基本の基だな! それいってみようぜ!」
「全く、本当にあの時の月水《げすい》は手におえんかったぞ!」
◇あの事は忘れてくれ……頼むよ~えみたん?◇
「うっせ~! だからその呼び方するなって言ってるだろ!」
谷先生はまるでヤンキーのように媚びる月水《げすい》にキレた。
「そんな言い方酷いよー!
僕は、ママにも叱られたこと無いのにー!!」
「駄目だこいつ。早くなんとかしないと……。
お前ホンマウザいわ!
テメエはもう
チンでてぃまえー!!
あーもう!
だいぶん話が脱線したが、単刀直入に聞こう!
うちらの街をあんな風にめちゃくちゃにしたのはてめえだな、
月水《げすい》?」
◇ま~半分正解だね◇
「半分?
どういうことだ……?」
◇君たちの街がめちゃくちゃになった大元の責任は
君たちにある◇
「うちらに?
それは何故や?」
◇君たちがあの少女が住む19万6883次元に興味本位で行ったりしたから、
関係が生まれ巻き込まれてしまったんだよ◇
「あの少女だと?」
◇僕があの娘の暴走のきっかけを作ってしまったのは
素直に認めるよ◇
「きっかけだと?」
◇僕はこれでも各国の首脳と繋がりがあってね、
数理研究の質の見直しを進言して回っているんだ……◇
「ああ、うちは知ってる!
お前のせいでうちはアメリカとイギリスの大学、
清都大学からお払い箱にされたからな!」
◇わかってくれよ~、
君の宇宙の本質を探す基礎研究は、僕達の研究の依頼主である
国家やパトロンの実益に繋がらないじゃないか?◇
「だからってきさまはうちのように基礎研究をメインに扱う世界中の数理学者達を弾圧しているのか?」
◇弾圧なんてひどいな~、
僕はちゃんと、一人も漏らす事無く再雇用先の大学も手配しているんだよ◇
「貴様~!
それで、うちのように物理や数学から宇宙の本質を研究する学者達の研究をやめさせて原子力の研究をさせているんだな?」
◇そうだよ。
まあまあ、えみたん落ち着いて。
君はまるで、量子論のコペンハーゲン解釈に神はサイコロを振らないって言って駄々をこねたアインシュタインみたいだよ。
不確定性原理で真相は絶対に知ることが出来ない事は逆説的に
証明され科学者達はみんはそれに反論できないんじゃないか?
もう科学が心理を探し夢をみるバブル時代は終わったんだよ。
だから僕はね、君も早く 実在論的基礎研究《ゆめ》から覚めてスポンサーからの需要と資金提供があっての実証論的研究をすべきだと思うんだ。
ね? これが一番合理的ですばらしいことだろう?◇
「ふざけるな!
それに、お前は科学者としての大切な心を無くしている!
お前のやっていることは
核兵器、軍事利用だろ!
お前はパトロンの為なら戦争という人殺しにだって平気で加担するのか?
答えろ!」
◇科学者の戦争への加担は沢山の前例があって何も
今に始まったことじゃないよ。
それに、インターネットのようにそこから生み出された技術が今の便利な暮らしに役にたっている例だってたくさんあるんだ。
それと、僕は原子力の研究分野で原子力発電だって推進しているんた。
あとは、教科書の内容を……◇
「教科書?
月水《げすい》! お前だな?」
谷先生は泣きながらそう言い続けた。
「お国の都合とかで、数学や科学の本当の楽しさを子供達に教えないのは!
うちら大人の勝手な都合で、子供達の未来を、可能性を奪うなよ!」
◇まあまあ落ち着きたまえ◇
「お前忘れたんか?
うちとお前に科学と数学の楽しさを教えてくれた先生を……。
先生は、実験の準備で休日も返上し、
学校の方針に逆らって自分の立場を危うくしてまで、
そこまでして、うちら二人に数学の、科学の、本当の楽しさを教えてくれたやないか?」
◇恩師の先生には感謝している。
でも、それは過去だよ◇
「過去だと?」
◇とにかく、僕は少女の暴走のきっかけを作ってしまっただけなんだ。
元に戻すには、その少女に頼むしかない。
それじゃ僕は忙しいから失礼するよ◇
「コラ待て! 月水《げすい》!」
谷先生は月水《げすい》って言う人を引き留めようとしたが、
もうその人は消えた後だった。
わたしは愛理栖探しを再開し辺りを見渡した。
「あ、グリ? 何してるの?」
「…………」
グリはあたしの質問には何も答えず、
ただ、真剣に巨大結晶に向かい合い、
反射して映る自分の姿をじっと見つめているようだった。
そして、グリはそっと右手で直接結晶に触れた。
「キュュュュ~ン!」
突然、グリの目の前の結晶にブラックホールのような穴があき、物凄い吸引でグリをひと飲みで吸い込んでしまった。
「グ、グリ……?」
あたしは、そのあまりに突然の事態に
ただ唖然として他に何も発することが出来なかった。