「ちょっと、これは一体どうなってるのですか?」

美希さんに連続して、この最悪のタイミングに誰かが入って来た。

開けっ放しのままにした教室のドアに怒り声を上げながら飛び込んできたのは、クラスの担任の佐藤先生だった。佐藤先生は驚いた顔で、僕の方に視線を向けた。

「先生、大変なんです。栗原君が、ハサミを投げて………」

突然、女子生徒のひとりが叫んだ。

「栗原がハサミを投げて、男子生徒のひとりが大ケガしたんです」

前の人に続くように、また大きな声で生徒のひとりが叫んだ。

「栗原の投げたハサミが、男子生徒のわき腹に刺さったんです。それで、教室はこんな大変な状況なんです」

クラスメイトの生徒たちは、僕がいじめられていたことは先生に報告しない。僕がやった、今起きているこの状況だけを先生に伝えている。

ーーーーーーこれじゃ、僕が完全に悪者みたいじゃないか。ああ、悪者か。はぁ。僕、美希さんに完全に嫌われただろうなぁ。

そう思うと、僕は今の彼女の顔を見る勇気はなかった。

ーーーーーーきっと、軽蔑した目で僕のことを見てるんだろうなぁ。

これが原因で美希さんに嫌われたことをイメージすると、僕の高校生活に希望を持てなかった。